相続登記を入れない売買による所有権移転

こんにちは

おおきまちの司法書士です。

先日、相続登記を入れずに売買することはできないという

記事を書きました。

相続発生後に売却する場合には、まったくその通りで

相続登記を飛ばしての売買による所有権移転、名義変更は

できません。


今回のお話は、相続登記とは関係なく、単純な売買による

所有権の移転です。

次の例で考えてみましょう
売主:A
Aの相続人:B
買主:X
対象物件:甲土地


AとXは平成23年に売買契約を締結し、代金の授受を済ませて

いましたが、名義変更の所有権移転登記をしていませんでした。

そんな中、Aが平成25年に急逝しました。


さて、この場合にも相続登記を入れてからXに引き渡す必要があるのかと言う話です。


ちょっと難しい話になりますが、売買契約はいつの時点で

成立するのか、というお話をします。

民法と言う法律には、売買契約がいつ成立するか書かれています。

民法の555条ですね。

以下のような条文です。

「売買は、当事者の一方がある財産権を相手に移転する事ことを約し、

相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」


言い回しがなかなかわかりにくいの要約すると、売ります・買いますの

約束をすれば売買契約成立します、とのことです。


鋭い人はここで疑問に思います。

「代金の支払いをしなくても所有権が移転する?」

そうです。民法の条文では約束だけで所有権は移転します。

しかし、実際は名義が変わるのは代金を払ってから等の

特約を付けています。

これも難しい言葉ですが、同時履行にしようと言う事です。


さて、前置きが長くなりましたが、先の売買契約は、

結論としてはXに所有権が移っていて名義変更の登記を

入れていないだけの状態です。

そうであるならば、相続登記を入れなければならない

と言う風には考えませんよね?

むしろ、Xに所有権が移っているのであれば

相続登記は入れてはダメです。


田舎の方では、「昔売買したけど、登記費用が勿体なかったので

そのままにしてました。」という土地が結構あったりします。

しかし、数十年登記を入れずに放置していると、

当事者が亡くなり、相続人の世代になります。

相続人としては、名義が被相続人の名義になっていれば

自分の相続財産だと言う事で相続登記を入れますね。

当時の売買を証明する契約書も無くなってるかも知れません・・・

そうして問題がどんどん複雑化して行きます。


不動産登記は義務ではありませんが、登記をしないデメリットは

甚大ですので、もし実質上の名義は変わっているのに

登記をしていない、言う状態の不動産があれば

早めに登記を済ませておくことをお勧めします。