不動産の単独所有と共有 その2

こんにちは

おおきまちの司法書士です。


今回は前回に続き、不動産は共有にすることのデメリット

についてご紹介します。

前回は売買の場面でしたが、担保設定する場合を次の例で考えてみます。

甲土地:A(1/2)B(1/2)
乙建物:A(1/2)B(1/2)

被相続人Xが亡くなり、配偶者YはXよりも昔に死亡しています。

A・Bはともに子で、Aが現在乙建物に居住しておりBは

遠方に住んでいます。

「Bが遠方に住んでいるのであれば、Bの持分はいらないんじゃ・・・」と

考えられた方は、至極まっとうです。


ただし、中には相続人間の仲が悪くて遺産分割協議ができず、

やむなく法定相続分に基づいて共有としている場合もあります。

本当はその時点で対処する必要がありますが、専門家

に相談せずに法定相続でやってしまうケースもありえます。

このケースでは、本当は遺言書を遺しておいてほしいところです。


共有名義で相続登記を入れましたが、実際住んでいるのはAです。

Aが自宅を大がかりなリフォームしたいと思い、リフォーム業者に

見積を依頼すると500万くらいかかりそうです。

この場合で、手持ちの現金でリフォームできれば何の問題も

ありませんが、500万円の現金を一括で出せる人はそうそういないですね。


そんなとき活用するのがリフォームローンですが、当然ながら

不動産を担保に取るので、抵当権の設定が必要となります。


ここで2つの問題が生じます。

1.そもそも銀行が共有状態の不動産についてローンが下りるのか?

2.Bの協力は得られるのか?

1については、共有状態の不動産についてすべての場合で

ローンができないわけではありませんが、大半の銀行

はこの例の状態でしたらローン実行は不可とします。


共有の状態でローンが下りるのは、夫婦や親子の場合で一緒に

住んでいるケースですが、この例ではBは遠方に住んでおり

同居の状態ではありませんので多くの銀行は断ることが予想されます。

AB間の仲が悪ければ、なおさらです。


次に2について、仮に銀行のオッケーが出たとしても、Bの協力が必要となります。

担保の設定は、法律的には「処分行為」と言いまして、共有者全員の同意が必要です。


要するに、担保を設定するにはBの同意が必要であり、Bの

権利証と印鑑証明書と自筆の署名及び実印での押印が

必要となるのです。

相続登記の際に仲が悪くて協力しなかった当事者が、担保の設定と言う

処分行為について協力することはまず考えられませんので、

やはり、不動産を共有にしておいた最初の時点で失敗しています。


このように、不動産は共有にしていると売買ができなかったり

抵当権の設定ができなかったりと、反対者が一人でもいれば

権利者でありながら処分行為が全くできず、困った状態になります。

このような事態を防ぐためにも、相続登記の際には最初から

単独所有にしておくことが大切です。

次回は共有不動産の相続についてお話します。